世界のカーペット
世界中、あらゆる地域で作られるラグ・カーペット。
皆さんの住まいの玄関やキッチン、応接間などにも装飾的なデザインのカーペットや、エスニックなモチーフを持つラグがありませんか?こちらでは、世界各国で作られている、カーペットの特色をご紹介。皆さんのカーペットに関する知識をちょっとだけ深める情報をご紹介いたします。
アジアのカーペット
ペルシャ
ペルシャ(現在のイラン)で生産される段通の総称をペルシャじゅうたんと呼ばれています。
ペルシャ絨毯の発祥はサーサーン王朝(226~641)で、その後、蒙古民族のティムール朝(1369~1500)で極東からの文化が侵入し、次のサファービー朝(1502~1736)の歴代の君主は美術への造詣が深く、タハマースプ1世はタブリーズの王宮にだんつう工場を建て、自らデザインにかかわったと伝えられています。都をイスファハーンに移したアッパース大帝(1587~1629)も王宮に工場を設け、段通の発展に大変尽くしました。スルタン、ムハマッドのような優れた宮廷画家に下絵を描かせ、またギュート、エド・デイン、アリとその子ヤーシのような不世出の名織匠をかかえて、世界でも最高といわれる傑作を織り出しました。
ペルシャじゅうたんのデザインは当時隆盛を極めたミニチュア画に負うところが多くあります。ペルシャ各地の民芸は最高芸術として世界各国の美術館を賑わし、アッパース1世時代には最も多く傑作を生みだし、”アッパース柄”としても有名です。イランはイスラム教のシーア派に属し、生物描写や色についても寛容なため、曲線美や多彩な色彩を使った華麗なデザインの美術品ともいえる段通を現在にいたるまで生産しています。他方、クルド族などの遊牧民が織りなす粗い手織りじゅうたん、ギャッベ(Gabbeh)は自然をモチーフしたユニークデザインや独自の風合い等で近年注目を集めています。
カフカス(コーカサス)
現在のロシア、カスピ海と黒海の中間にあるのカフカス地方です。
カーペットの文化が花開いたのは16世紀、イランのサファービー朝の影響下にあった時代とされています。鮮やかな色彩の花や動物、時には動物同士・動物と人の戦いを描いた絵画的なデザインや、幾何学模様を中心とするデザインが考案されました。
モンゴル・ウイグル地方
現在の呼び名は、新疆ウイグル自治区。
シルクロードの西と東を結ぶ地点で多くの文化が交わり、素晴らしいデザインのカーぺットを生みました。この地域のカシュガル・ホータンなどには、現在でも中国的な格子紋や雲帯、ペルシャやインドの花や幾何学模様などが交じり合った独特のデザインの絨毯が残されています。
トルコ
アジアとヨーロッパの中間、トルコもウイグルと同じように東西の文化の交流から優れたカーペットが生み出されました。
中央アジアから移動してきた人々によって、幾何学模様やペルシャ様式の緻密なデザインカーペットも作られ、11世紀以降には、十字軍が進軍しトルコから絨毯技術をヨーロッパへと持ち帰りました。
インド・パキスタン
インドのカーペットは、かのチンギスハーンの末裔バブールによって興された、ムガル朝において発展しました。
ムガル朝最大の皇帝アクバルから、それにつながるシャー・ジャハーンに至る100年間がその最興隆期。周辺地域の優れた工芸士が呼ばれ、緻密な織り目のカーペットを作り出しました。
エジプト
エジプトでカーペットが多く作られ始めたのは15世紀後半ごろ。
オスマン・トルコのマルムーク朝の影響下で、トルコ様式のカーペットが作られました。
中央アジア
アフガニスタンやトルクメニスタンなどでは、トルクメン族・カラパルパック族がカーペット文化を担いました。
この地方では、「ギュル」と呼ばれる連続した幾何学模様を配したカーペットが生み出されています。
中国
中国ではシルクロードを通じて段通の技術が伝えられ、唐の時代にはすでに織られていました。現存する中国段通は明朝以降のもので、康熙帝(1662~1722)と乾隆帝(1736~1795)時代に生産されたものが最も美術価値が高いとされています。中国独自の図柄は欧米人にも受け入れられ、戦前には天津から多量の段通が輸出されました。カービング加工やケミカルウオッシュによる光沢を出す技法もこの頃からのもので、その手法は現在のシルク段通やチベット段通にも生かされています。
日本
日本にカーペットの文化が到達したのは、奈良時代。仏教の伝来と共にシルクロードを渡ってやってきました。
日本ではカーペットのことを緞通(だんつう)と呼びますが、これは中国でカーペットを表す「タンツ」という言葉に由来。九州の鍋島、兵庫県の赤穂、大阪の堺や山形などで緞通は作られ牡丹や亀甲、雲竜など日本独特のスタイル・デザインが生み出されました。
ヨーロッパのカーペット
イギリス
イギリスではパイル絨毯が多く作られました。
古いものでは16世紀頃に制作された「ノリッジ絨毯」と呼ばれるものが残されています。これにはアナトリア・インド・ペルシャの文様やエリザベス朝のブドウの樹などがあしらわれ、文化の伝播を物語っています。やがて、古典・新古典主義の興隆と共にデザインも変化し、産業革命においては織物・カーペットの一大生産国としてその名をとどろかせました。
フランス
17世紀初頭、フランスのアンリ4世によってトルコ様式のカーペットが生産されるようになったフランス。
やがてルイ13世、太陽王ルイ14世の時代になると、ロココ様式やバラの花・貝をかたどったものや、神話を題材にした優美なデザインのカーペットが数多く生まれました。その多くは、皇帝や貴族の権威を示す豪奢な装飾によって彩られました。
スペイン
ヨーロッパのカーペットの中で、最も早く生まれたスペインのカーペット。
10世紀頃にカーペットの生産が始まり、その後イスラム教徒によるスペインの征服と、大航海時代、16世紀のルネサンス期の文化再興によって、綿・絹など様々な材質や文様の絨毯が生まれました。代表的なものは初期のムーア風装飾と、ルネサンス期のザクロをあしらったモチーフです。